共同生活援助を運営されている方の多くが、「介護サービス包括型」のサービス類型を採用されていることと思いますが、
令和6年度の報酬改定で「日中支援加算(Ⅱ)」が初日から取れるようになったのはご存じでしょうか。
先日、あるグループホームの事業者さんとお話をしていたときのこと。
「日中支援は、持ち出しになるから辛いよね…」という話に対し、私は思わずこう言いました。
「えっ!日中支援加算、取ってないんですか⁉」
すると、驚いた表情で返されたのです。
「それって、3日目から取れる加算じゃないの?」
令和6年度の報酬改定で、この加算は大きく見直され、初日から届出不要で算定できることを、この事業者さんたちはご存じなかったようでした。
利用者さんが突然体調を崩す、情緒が不安定になる——そんなことは、グループホームでは“よくある日常”。
それなのに、1年以上も知らないままでいたなんて…
もしかしたら、他の事業者さんでも同じような方がいらっしゃるかもしれません。
この記事では、そんな「もったいない」を防ぐために、
日中支援加算(Ⅱ)の制度内容と請求方法、そして現場での活用事例をお伝えします。
日中支援加算(Ⅱ)ってどんな加算?
通所や就労の予定があった利用者さんが、その日に通えなくなってしまった場合、
その代わりにグループホーム内で日中の支援を提供したら算定できる加算です。
たとえば、こんなとき――
【事例①】通所当日、体調がすぐれず欠席に
→ ホームで食事や服薬、休養支援、相談支援を実施
→ 算定可
【事例②】就労先が臨時休業になり、自宅待機指示
→ ホームで活動支援・見守り支援を提供
→ 算定可
現場ではよくある対応ですが、制度として評価されるようになったのは大きな変化です。
また、平日に日中活動サービスを利用している場合に取得できる加算ですので、土日や祝日などは算定できないことに、ご注意ください。
対象は「介護サービス包括型」「外部サービス利用型」
特に、グループホームで最も多く採用されている「介護サービス包括型」の事業所では、まさにこの日中支援加算(Ⅱ)が使える類型です。
知らずに見過ごしていた…という事業所さんも多いのではないでしょうか。
「利用者さんが通所できないときの支援は、全部“持ち出し”」と考えていたとしたらもったいない話です。
日中支援加算(Ⅰ)との違いは?
ここでよく混同されるのが、日中支援加算(Ⅰ)との違いです。
| 加算の扱い | 条件等 |
|---|---|
| 日中支援加算(Ⅰ)が基本報酬に内包 | 65歳以上又は支援区分4以上の利用者で常に日中にホームで支援がある前提。 ※日中サービス支援型は(Ⅱ)は対象外 |
| 日中支援加算(Ⅱ)を条件に応じて算定可能 | 通所や就労予定が中止となり、急遽ホームで支援した場合に該当 |
「日中サービス支援型」には加算(Ⅰ)のみで基本報酬に含んでいるため、加算(Ⅱ)は取れないことも、注意点の一つです。
令和6年度改定でどう変わった?
改定で最も大きなポイントは、
「支援の初日から日中支援加算(Ⅱ)が算定できるようになった」という点です。
これまでは、1日目・2日目の支援には加算がつかず、3日目以降からしか算定できませんでした。
しかし令和6年4月からは、初日からしっかりと加算対象になるよう制度が見直されました。
「当日朝に体調を崩した」
「急に通所が中止になった」
そんな突発的な支援にも対応できる、より実態に沿った制度になったと言えます。
| 項目 | 改定前(〜R6.3) | 改定後(R6.4〜) |
|---|---|---|
| 算定開始日 | 支援3日目から | 初日から算定可能に! |
単位数の目安(1日あたり)
| 支援対象 | 単位数 |
|---|
| 区分4以上・1名支援 | 539単位 |
| 区分3以下・1名支援 | 270単位 |
| 区分4以上・2名以上支援 | 270単位 |
| 区分3以下・2名以上支援 | 135単位 |

※令和6年度 障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(概要資料)より引用(下記に該当資料ページ記載)
請求方法もシンプルです
日中支援加算(Ⅱ)は、事前の届出が不要です。
毎月の請求時に、該当する日を国保連請求様式に記載するだけで算定が可能です。
とはいえ、ただ入力するだけで請求できるわけではありません。
以下の点を押さえておく必要があります。
- 個別支援計画に、その支援内容がしっかりと位置づけられていること
- 欠席理由や当日の支援内容を記録として残していること
つまり、「その日、なぜホームで支援が必要だったのか」「どんな支援を行ったのか」が明確になっていることが重要です。
実施記録と個別支援計画の内容が食い違っていると、加算の根拠として認められない可能性もあります。
請求時には、“記録と計画の整合性”を意識しておきましょう。
この記事とあわせて読みたい:
日中支援加算ⅠとⅡの違い~記録の重要性について~
参考資料(根拠資料)
本記事の内容は、以下の厚生労働省公表資料をもとに作成しています。
- 厚生労働省|令和6年度 障害福祉サービス等報酬改定関連ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00009.html
報酬告示・通知・Q&Aなど、改定内容全般に関する公式情報。 - 令和6年度 障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(概要資料)
(令和6年2月6日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)
https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf
▶【p.25】「共同生活援助における支援の実態に応じた報酬の見直し」記載あり。 - 障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A(Vol.1)
(令和6年3月 厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/001260473.pdf
▶【p.36】一部訂正されたQ&Aに、日中支援加算(Ⅱ)に関連する記述あり。 - 令和6年度 障害福祉サービス等報酬改定の概要
(令和6年2月6日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)
https://www.mhlw.go.jp/content/001216035.pdf
▶【p.43】「日中支援加算(Ⅱ)について、介護サービス包括型及び外部サービス利用型では支援初日から評価を行い、日中サービス支援型は廃止」と明記。
にしのみや福祉こあみ行政書士事務所では、
日中支援加算をはじめとした各種加算の運用サポートはもちろん、
指定申請、運営体制整備、記録や計画書の見直し、報酬請求実務まで――
グループホームを中心とした障害福祉サービス全般の支援を行っています。
現場の実情を理解した上で、制度にしっかり対応できるよう、
「現場と制度をつなぐ伴走者」として、事業者さまに寄り添ったサポートを心がけています。
◆制度対応に不安がある、
◆ 記録・加算・計画の整合性を整理したい、
◆ これから新規開設を検討している、
そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。


