本日6月6日、「行政書士法の一部を改正する法律」が参議院本会議で可決・成立しました。
この改正法は令和8年1月1日より施行されます。
今回の法改正により、これまで曖昧だった「行政書士業務の独占範囲」が、明確になったかと思います。
これにより無資格で行っていた「障害福祉コンサル」への影響は非常に大きくなると予測されます。
「報酬を得て行う書類作成」は、行政書士の独占業務です
行政書士法第19条の改正により、
「行政書士または行政書士法人でない者が、「報酬を得て官公署に提出する書類の作成・手続き代行を行うこと」は、明確に違法行為と定められました。
【改正前】
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第1条の2に規定する業務を行うことができない。
【改正後】
第19条(業務の制限)
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず、報酬を得て
業として第1条の3に規定する業務を行うことができない。
第1条の2に規定する業務とは、①「官公署に提出する書類」②「権利義務に関する書類」③「事実証明に関する書類」にかかる書類作成のことで行政書士の独占業務となり、
第1条の3に規定する業務とは、独占業務ではないが行政書士ができる業務となります。例えば、「官公署への提出(申請手続き)」などがそれにあたるかと思います。
また「報酬」には「会費」「支援費」「顧問料」など、名目を問わず対価性があるすべての支払いが含まれます。
つまり、障害福祉の申請手続きはもちろん、消防への届出や申請、建築確認に必要な書類作成を含む一連の「行政の手続きに伴う書類」は、無資格の方が報酬を得て、作成および提出することは法律違反です。
「コンサルだから問題ない」といった言い訳は、もう通用しません。
障害福祉の現場で実際に起きているトラブル
障害福祉事業の立ち上げや運営には、さまざまな行政手続きが関わってきます。たとえば、次のような業務があります。
- グループホームや就労継続支援事業所の指定申請
- 加算や変更に関する届出書の作成
- 消防法に基づく設備設置届、防火管理者選任届の提出
- 建物用途変更や設備変更に関する行政との協議や手続き
- 加算算定に必要な人員配置基準の確認や実務経験証明書・資格証の提出
これらの業務を、これまで一部の「障害福祉コンサル」が有償で代行してきたケースがありました。
しかし、実際には次のような行政指導やトラブルが発生しています。
- 現場経験が豊富なコンサルに相談した結果、消防の届出が漏れたまま開所し、是正勧告を受けた
- 「設備はこれで問題ない」と言われて提出した申請書類が、建築基準法や消防法の基準を満たさず、事業開始が遅延
- 依頼した申請に虚偽記載があり、運営指導や監査で発覚し、指定取消し処分に
- 加算届を作成してもらったが、要件を満たさず不正請求と判断され返還
- 人員配置基準を満たさない職員で加算を算定し続け、後から過誤返還の対象に
これらの問題は、最終的な責任はすべて事業者が負うことになります。
「信じて任せたのに…」では済まされないのが制度の現実です。
事業者さんへのお願い
障害福祉事業は、ただ現場が回ればいいというものではありません。
制度を理解し、ルールを守り、利用者さんやご家族の暮らしを支える大切な仕事です。
手続きを頼む相手は、法的な責任を持てる専門家であるかどうかを、必ず確認してください。
そして「何を頼むか」を考えるときは、ぜひ「制度の専門家」と「現場支援のパートナー」の役割を整理し、必要に応じて組み合わせていく視点を持っていただきたいと思います。
当事務所では、障害福祉に特化した行政書士として、事業者さんが安心して運営に取り組めるよう、正しい手続きのサポートを行っています。
「これって大丈夫?」と不安になったときは、どうぞお気軽にご相談ください。