「食材料費の取扱い」が厳しくなっている?運営で見直すべきポイント

運営・日常業務

利用者から食材料費を過大に徴収したり、残額の使途が不明なまま処理されるといった問題が、実際に報道され、大きな関心を集めたことはご存じの方も多いかと思います。
これを受けて、厚生労働省は事務連絡を発出し、事業者に対して注意喚起を行いました。

こうした背景から、今年度は「食材料費の取扱い」について、各自治体による監査や指導がこれまで以上に厳しくなるのではないかと懸念されています。

こうした動きを受けて、「グループホームの食材料費の取り扱い、これで本当に大丈夫?」と不安を抱える事業者の方も増えているように感じます。

そこで今回は、共同生活援助(グループホーム)における食材料費の基本ルールと押さえておくべき注意点、そして今後の運営で見直すべきポイントについて、最新の集団指導資料や行政通知をもとにわかりやすく整理してみました。

そもそも「食材料費」とは?

厚労省の言い回しでは、「食費」ではなく「食材料費」と記載することが求められています。

この違いには大きな意味があります。

グループホームで提供する食事には、調理や提供といった支援の側面が含まれており、これは介護給付の中で評価されている部分です。

つまり、利用者から徴収できるのは“食材”にかかる実費分のみなのです。

そのため、

運営規程や重要事項説明書では「食材料費」と記載することが求められ、金額も実態に基づいた内容で記載 が必須とされています。

なぜ問題視されているのか?

実際に報道された事案では、利用者から食材料費を徴収しながら、使いきれなかった分を高熱水費など他の費目にまわしたり、返金も説明もないまま事業者の利益として処理していた例がありました。

厚労省はこのような行為について、指定基準違反 なんと、障害者虐待防止法における「経済的虐待」に該当する可能性 とまで明言しているのです。

現場の本音「毎月精算して返金なんて無理…」

では、食材を一切余らせず、毎月ぴったり使い切り、残額が出たらその都度返金する——そんな運用が本当に現場で現実的でしょうか?

私自身も世話人をしていた経験から限られた予算の中で食材を購入し、やりくりをした経験がありますが・・・ハッキリ言って無理!

価格の変動を見ながら献立を調整し、レシートをきちんと保管・仕分けするだけでも、現場には相当な手間と工夫が必要なことは実感として持っています。

それなのに、利用者ごとに徴収額を確認し、少額の差額を毎月返金するとなると、職員の事務的負担は大きくなり、不信感を招くケースもあると感じています。

「繰り越し」運用は可能?どこまで許されるのか?

ここで大切なのは、「毎月返金が義務」ではないということ。

厚労省は通知の中で、「残額が出た場合には、返金または今後の食材料費として適切に支出する等により、適正に取り扱うこと」としています。

つまり、次月に繰り越して使用すること自体は問題ないのです。

ただし、ここで注意すべき大前提があります。

広熱水費や日用品費など、食材料費以外への“流用”はNGだと解釈している自治体が多いということです。

この点があいまいになっていると、「経済的虐待」とみなされる可能性すらあるため、特に注意が必要です。

今、見直すべき具体的な運営ポイント

下記は、どれも基本的なことですが、あらためて確認しておきたい内容です。

運営規程と重要事項説明書の修正  
・「食費」ではなく「食材料費」と記載
・ 金額は実態に即した内容で

収支の記録と説明体制の整備  
・食材料費の徴収・支出をきちんと記録
(利用者や家族に収支の内訳を求められたらすぐ提示できるように)

繰り越しする場合の対応  
・事前に「繰り越し運用の方針」を明記(重要事項説明書に記載)
・利用者または家族から書面で同意を得る  
・年度ごとに精算し、透明性を確保

領収証の発行と保存  
・徴収時に領収証を交付し、控えを保存

さいごに:事業者の信頼を守るために

食材料費の取扱いについては、制度的な厳格化だけでなく、利用者やご家族からの信頼にも関わる大切なテーマです。
日々の運営の中でつい後回しになってしまいがちな部分ですが、「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされない時代になってきています。

逆に言えば、今のうちに丁寧に整えておくことで、安心して事業を続けられる土台をつくることができます。
不安なところがあれば、部分的な見直しからでも構いません。必要に応じて、専門家に相談することも一つの方法です。

小さな備えが、将来の大きなトラブルを防ぐことにつながります。
今できることから、一つずつ取り組んでいきましょう。