はじめに
前回(第1回)は、兵庫・明石の公開資料をもとに「よくある5つの落とし穴」を整理しました。
ただ、そこに出てくる多くの事例は2023年度時点のもの。2024年度の報酬・基準改定や、その後の国の方針整理を踏まえると、今後の運営指導はさらに厳格化していきます。特に共同生活援助(GH)は重点対象として、頻度(3年に1回以上)や確認項目の標準化、法人横断でのチェックが進みます。
この回では、2025年現在の最新基準に照らして、「これから必ず問われる視点」を実務ベースで整理します。
ポイント① 委員会・研修・計画「やっている」を証拠で示す
2024年度改定で、虐待防止・身体拘束の適正化・感染症対策・BCP(業務継続計画)などが強化されました。未実施や未整備には“明確な減算”が設けられています。
2024年度から義務化された取り組みは以下のとおりです。
- 虐待防止委員会・研修(年1回以上)
⇒虐待防止措置未実施減算 … 1%減 - 身体拘束適正化委員会・研修(年1回以上)
⇒身体拘束廃止未実施減算 … 10%減 - 感染症対策委員会(おおむね3か月に1回)、研修・訓練(おおむね6か月に1回)
⇒義務化済みですが、現時点では減算規定はありません - 感染症・災害対応の BCP(業務継続計画)の策定・訓練(年1回以上)
⇒業務継続計画未策定減算 … 3%減 - 障害福祉サービス等情報公表(年1回以上)
⇒情報公表未報告減算 … 10%減
「やっていない」はもちろん問題ですが、「やった証拠が残っていない」も同じくらい危険です。
👉残しておきたい記録書類:
- 議事録(日付・出席者・議題・決定事項・次回方針)
- 出席簿(署名)
- 研修資料・周知記録(配布物、事業所内掲示、写真 など)
- 計画書(BCP、感染症)
ポイント② 個別支援計画と加算はセットで運用する
多くの加算は「計画上の位置付け」+「実施の記録」がセットの算定要件です。
また、計画書の関係先への交付・共有が強化されています(相談支援事業所への交付義務化 など)。厚生労働省
👉 次の加算は、必ず 個別支援計画に書かれていること が算定要件です。
- 夜勤職員配置加算
- 重度障害者支援加算
- 日中支援加算
- 帰宅時支援加算
- 入院時支援加算
・算定前に「計画 ⇄ 実績日誌 ⇄ 算定根拠」を突合。
・支援会議の議事録に「加算の根拠となる支援をどのように計画へ反映したか」を明記。
・モニタリングでは「計画と実施の差異」を確認し、差異があれば計画修正を。
ポイント③ 日誌は「具体的に」
「特になし」「落ち着いていた」といった抽象的な記載が続くと、“支援の実在”が説明不能になります。
誰が見ても分かる粒度で、加算や計画に紐づく行為を具体に:
- 服薬確認/副作用観察
- 日中活動先との情報共有(日時・相手・内容)
- 帰宅後の不安定さに対する声かけ・見守りの方法
- 夜間巡回の頻度・時刻・所見
これらは計画の文言に関連づけておくと、運営指導当日の説明が楽になります。
【よくある記録】
- 「特に変化なし」
- 「落ち着いていた」
👉 これだけでは、運営指導では「何もしていない」と見られてしまいます。
【改善のヒント】
- 「服薬を確認した」
- 「日中活動先に連絡した」
- 「帰宅後に落ち着かない様子があったため声かけした」
このように、誰が見ても支援の内容が伝わる記録を残すことが大切です。
関連記事⇒その記録、支援の“証明”になりますか?
ポイント④ 人員配置と夜勤体制
人員基準配置は「前年度平均利用者数」等の実績を根拠に算出され、加算の配置要件は基準配置とは別建てで求められます。
このため、「基準はOKだが、加算要件で不足」で指摘を受けることも多くなっています。
三点突合(勤務表・出勤簿・研修履歴)で在籍と従事実態を証明し、欠員補充フローを運用ルール化しておきましょう。
人員配置の見直しは半年ごとに“将来の入退去見込み”も踏まえて再計算するのが安全です。
基準配置は「前年度実績」が根拠
前年度の延べ利用者数をもとに配置基準が決まるため、利用者が増加すると「配置不足」と見なされやすい。
👉 改善策:半年ごとに利用者推移を確認し、シフトを柔軟に調整する。
加算算定には“別の配置”が必要
日中支援加算や夜勤職員配置加算は、基準とは別に必要な人数が決まっている。
「基準は満たしているのに加算要件で不足」となるのは典型的な指摘です。
👉 改善策:「基準配置表」と「加算配置表」を分けて管理する。
根拠資料の不足
勤務表・出勤簿・シフト・研修履歴が揃っていないと「いない」と判断される。
👉 改善策:三点突合(勤務表・出勤簿・研修記録)で証拠を残す。
ポイント⑤ お金のやりとりは「透明に」
GHは家賃・食材料費・光熱水費・日用品費などの受領が絡むため、実費精算・内訳明示・領収証交付が不十分だと返還・指導に直結します。
食材料費や光熱費は 実費だけを徴収 するのが原則です。
- 余剰が出ても返金しない
- 領収書に内訳がない
👉 これらは「不当徴収」とされ、返還指導につながります。
【改善のヒント】
- 「食費」ではなく「食材料費」=実費のみが原則
- 年1回以上の精算と残額返金(または次期食材料費へ適正処理)
- 領収書には必ず「項目別の内訳」を書く(名目を曖昧にしない)
※国の通知・Q&Aや各自治体資料でも繰り返し注意喚起されています。
まとめ
これからの運営指導では、
- 義務化された委員会や研修(虐待・身体拘束・感染症・BCP)
- 個別支援計画と加算の整合性
- 記録や費用の透明性
- そして 人員配置の根拠と証拠
が特に見られるようになります。
大切なのは、普段の運営がそのまま証拠になる仕組みを作ること。
形式的な対応ではなく、日常業務の延長でクリアできるように整えるのがポイントです。
次回(第3回)は、「個別支援計画に書き忘れると危ない加算」について、実際の指摘事例を交えながら、算定のチェックポイントを解説します。



