【兵庫県】GH事業、廃止の6割が3年以内に集中~指定・廃止の統計分析から~

コラム

はじめに

障がい者グループホーム(共同生活援助)は、制度化から約20年が経過し、地域生活の受け皿として全国的に整備が進んできました。

その始まりは1980年代後半、当事者や家族が自主的に始めた共同生活の試みです。

  • 1989年:知的障がい者向けグループホームが制度化
  • 1992年:精神障がい者向けグループホームが制度化
  • 2003年:支援費制度により「共同生活介護」として法定サービス化
  • 2006年:障害者自立支援法施行により「共同生活援助」として全国制度化

という流れを経て、現在の仕組みに至っています。

制度改正のたびに指定件数は増加し、2014年には障害者総合支援法施行の影響で一気に新規指定が増えるなど、参入ブームもありました。
その後も兵庫県内では新規参入が続いており、直近3年度(2022~2024年)だけで180件が新規指定されています。(下記参考図:当事務所作成)

一方で、廃止も増えており、特に2024年度は過去最多の28件が廃止という結果になりました。(下記参考図:当事務所作成)

この記事は、兵庫県が公表する指定障害福祉サービス等事業者一覧及び指定、廃止(2006年~2025年8月1日現在)をもとに当事務所が独自に調査・分析した内容です。
事業の立ち上げや運営を考える皆さまに、数字から見える現実をお伝えし、考えるきっかけとなれば幸いです。

廃止全体のうち「3年以内」が6割

兵庫県内でこれまでに廃止となった 131件(2006年~2025年8月1日までの累計)のうち、78件(約60%)が3年以内に廃止 されていました。
内訳は以下の通りです。

  • 1年以内:29件
  • 1~2年以内:19件
  • 2~3年以内:30件

➡ 廃止という観点から見ると、「3年以内に集中」していることがわかります。

直近の年度別の動向

直近の年度(4月~翌年3月)ごとの新規指定と廃止の件数を整理すると、次のようになります。

  • 2022年度:新規指定59件、廃止12件
  • 2023年度:新規指定57件、廃止13件
  • 2024年度:新規指定64件、廃止28件(過去最多)
  • 2025年度(4月~8月1日現在):新規指定30件、廃止5件

➡ 直近3年度(2022~2024年度)の合計では、新規指定180件、廃止53件(約29%) となっており、廃止の割合は年を追うごとに高まっています。
特に2024年度は廃止が28件にのぼり、過去最多を記録しました。さらに2025年度も、わずか4か月で5件が廃止、今後の動向に注意が必要です。

可能性のある廃止の要因

なぜ廃止が3年以内に集中しているのか―一因を断定することはできません。
ただし、分析や現場の声からは、以下のような要素が複合的に影響していると考えられます。

  1. 利用者確保の難しさ
    地域での認知不足や、家族との関係性が十分に築けていないことが影響し、結果的に利用者が集まりにくい。
  2. 人材不足・夜勤体制の維持困難
    職員の確保や定着が難しく、基準を満たす運営が継続できなくなるケース。
  3. 制度改正・運営指導への対応遅れ
    加算要件や減算が関係している義務化研修など、新たな制度対応が後手に回ることで、減算や返戻により収入が減少し、経営難に陥ることがある。

➡ これらは直接的に廃止を招くのではなく、経営基盤を弱め、短期廃止のリスクを高める要因と考えるのが妥当です。

なお、廃止のすべてが撤退や経営破綻を意味するわけではありません。
実際には、事業譲渡や法人変更に伴って「旧法人が廃止 → 新法人が新規指定」という形で統計に現れるケースもあります。
このため、廃止件数が増加している背景には、経営困難による撤退とともに、事業承継や再編の動きが含まれている点にも注意が必要です。

全体を通した分析

今回の統計から見えてきた特徴的な点は、「二極化」 です。

  • 解説初期の壁(3年以内)
    廃止件数の大半が3年以内に集中しており、特に「2~3年目」と「1年以内」が最も多い結果となりました。
    開設直後は資金繰り・利用者確保・人材定着が大きな課題となり、入居契約や加算収入が安定しない時期に経営リスクが表面化する傾向があると考えられます。
  • 継続できれば安定(10年以上)
    一方で、10年以上継続している事業所は161件 と非常に多く、地域に定着した事業所は長期的に安定しやすいことが分かります。
    運営基盤や地域との信頼関係が確立されれば、持続性は高まると推測できます。
  • 新規開設の増加と淘汰
    直近1~5年以内に開設された事業所もかなり多く、全体の約半数を占めています。
    依然として参入は盛んですが、「最初の3年をどう乗り越えるか」 が明暗を分けるポイントとなっているように感じています。
    初期段階の戦略や支援体制の有無が、廃止リスクに直結しているといえるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回、兵庫県のデータを独自に分析した結果、

  • 廃止全体で見れば → 3年以内廃止が約60%
  • 指定全体で見れば → 3年以内廃止は約12%
  • 直近3年度(2022~2024年)に開設した事業所で見れば → 約29%がすでに廃止
  • 2024年度は廃止28件で過去最多、2025年度もすでに5件

という数字が明らかになりました。

視点によって印象は異なるものの、共通して言えるのは 「最初の3年間が最大の廃止リスク期」 だということです。
さらに、直近で廃止件数が最多となった背景には、運営指導の強化があると考えられます。

数字が示すのは「怖い現実」だけではありません。
早めに準備を進め、信頼を得られる仕組みを築けば、安定した運営と地域からの支持は十分に可能です。
そのための伴走支援を、当事務所はこれからも続けてまいります。