ヒト・コト・モノが活かせる社会へ—農福連携の可能性

コラム

先日、行政書士会本会にて、各専門部会による業務研究グループ発表会がありました。 私は「医療・福祉専門部会」委員として、「土地・農地専門部会」の方々と共に兵庫県内の「農福連携」調査、研究に約2年間携わらせていただきました。

農福連携の課題と可能性

農福連携には、まず農業側と福祉側で求めていることの認識のギャップがあります。例えば、日照問題により農業側にとって手が必要な時間は早朝や夕方以降ですが、福祉事業者の営業時間は朝から夕方までが中心であるため、労働時間のマッチングが難しいという課題があります。

けれども、作業の細分化をはかることで、障害の特性に合わせた業務のマッチングや作業の効率化を進めることが可能になります。

例えば、農作業の中には「種まき」「除草」「収穫」「袋詰め」「選別」といった工程があり、それぞれの作業を適切に割り当てることで、障害のある方も無理なく関われる場面が増えます。特に、袋詰めや選別作業は、決まった手順で行うことができるため、細かい作業が得意な方に適しています。一方、収穫や除草は身体を動かすことが好きな方に向いています。

このように、適材適所での作業の細分化を進めることで、障害のある方が自分の得意分野を活かし、農業側も安定した労働力を確保できるという相乗効果が生まれます。

また、実際にとある市では、例年の豪雨等により玉ねぎの収穫が間に合わず、腐らせてしまう事態がありましたが、ある障害福祉事業所の利用者さんたちの手により難を逃れたという事例がありました。この農業者さんの事例を通して、他の農業者さんも障害のある方の手を借りることへの関心を持つようになり、農福連携の可能性がさらに広がっています。

また、農業者の方々からは「どの作業ならお願いできるのか、現場を見て判断してほしい」「支援ではなく、戦力として期待している」といった声もありました。これは、農業者側が行政書士に求めていることでもあります。農福連携のマッチングやコーディネートを行うためには、行政書士として両方の現場を知り、実際の業務や課題を理解し、知識を深めることが不可欠です。

行政書士として農福連携に関わる理由

実は、私自身、行政書士として行いたかった業務のひとつが、まさにこの農福連携でした。

宅地開発業者に勤めていた頃、遊休農地や農業の担い手不足を目の当たりにし、日本の生産力を維持するためには農業の活性化が不可欠だと痛感しました。また、障害のある方が自分の役割を持つことで喜びを感じ、社会とつながることで自己肯定感を高められることも実感していました。

情報格差を埋めることの重要性

農福連携を進める上で、もう一つの大きな課題が「情報格差」です。農業側・福祉側それぞれの現場の情報が十分に共有されず、「知らなかったからできなかった」という機会損失が生じてしまいます。

だからこそ、行政書士としてできることは、

  • 人(ヒト)のつながりをつくること
  • 場所や資源(モノ)を有効活用すること
  • 情報(コト)をつなぎ、格差を埋めること

これらを通じて、農業の力、福祉の力、地域の力を掛け合わせ、新しい価値を生み出す社会を目指したいと考えています。

今後の展望

農福連携は、単なる「支援」ではなく、農業と福祉が対等に協力し合うことで、持続可能な仕組みとして成り立つものです。そのために、行政や関係機関、現場の声をつなぎながら、農福連携の可能性を広げる活動を続けていきます。

ヒト・コト・モノが活かせる社会を実現するためにーこれからも学び、行動していきます!