「ケアリーバー」という言葉を耳にしたことはありますか?
ケアリーバーとは、児童養護施設や里親家庭などで暮らしていた子どもたちが、18歳などの年齢をもって「巣立ち」、社会の中で自立を始める若者たちのことを指します。
家庭という後ろ盾がないまま、住まい・お金・人間関係など、すべてを一人で抱えながら社会に出ていく——それは想像以上に大きなハードルです。
兵庫県でも「ケアリーバー相談窓口」が設けられており、退所後の支援体制は整えられつつあります(▶兵庫県HPはこちら)。
しかし、卒業生のその後…を伺うと「そのとき」になってからでは遅いのでは、と感じています。
「おせっかいな大人」として
そんな思いから、私はとある養護学校でボランティア活動をしています。
「支援者」としてというよりは、「おせっかいなおばちゃん」の一人として。
・こんな進路もあるよ
・こういう働き方もあるよ
・社会って意外と楽しいこともあるよ
そんな”ゆるやかな選択肢”を、生徒たちの前に置いておきたいと思っているのです。
私が所属しているチームには、様々な業種の経営者たちが参加しています。
毎回テーマを決めて、楽しく、自然な形で子どもたちと交流するイベントを開催しています。
たとえば――
- フラワーアレンジメント教室
- メイク体験会
- 「こんな仕事してるよ」座談会
- バーベキュー交流会&ビンゴ大会 などなど。
どれも、”学び”を押し付けるのではなく、「楽しかった!」「また会いたい!」と思ってもらえるような場を心がけています。
関係性を築くのが目的だからこそ、型にはまらない交流を大切にしています。
「あの時の人に、また会いたい」
それが、私たちの目指す支援です
卒業してから困ったことが起きたとき、誰にも相談できない。
そんな孤独がケアリーバーにとって最もつらい部分ではないでしょうか。
だからこそ、卒業する前から「気軽に話せる大人」がそばにいること。
それが、卒業後に助けを求める“入口”になると思うのです。
私たちのボランティア活動は、制度でも公的支援でもありません。
けれど、「あの時、イベントに来てくれたあの人」「焼きそば焼いてた人」
そんな曖昧な記憶でもいいんです。
ふとしたときに思い出してもらえるような、“顔の見える大人”でありたい。
それが、私たちが考えるケアリーバー支援です。
最後に
この取り組みを始めて、今年で3年目になります。
当初は「まずは顔を覚えてもらうことから」と、手探りでのスタートでしたが、
気がつけば、参加してくれた生徒の中には、メンバーの会社に就職した子も出てきました。
卒業後に「また会いたい」と思ってもらえたこと、
そして「この人たちと働きたい」と感じてもらえたことは、
何よりも活動の意義を実感する出来事でした。
もちろん、すべての子がすぐに頼ってくれるわけではありません。
でも、いつか困ったときに「話を聞いてくれた、あの大人がいたな」と
思い出してもらえるような関係性を、これからも築いていきたい。
「困ったときに相談できる人がいる」
その安心感を、社会に出る前に少しでも感じてもらえるように——
これからも、“おせっかい”を続けていこうと思います。